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造園社員の植物ノート・一重咲きと八重咲きの仕組み

野沢園スタッフblog 白梅

こんにちは! 野沢園ブログへの訪問ありがとうございます。 弊社では梅が開花し、早春の香りが漂っています。 

梅の花を見ていて「そういえば花の一重咲きと八重咲きの仕組みって、どんな感じだったかな」と、ふと気になりました。 そこで今回は花の咲き方の仕組みについてご紹介します。 

花の咲き方の仕組み

品種改良の技術が進歩したことで、草花の咲き方には様々な形状が増えました。 元々一重咲きだった種類は、どのようにして八重咲きの品種を作り出しているのでしょうか? その秘密は花の構造を作り出している遺伝子にあります。 

1990年代初頭に提唱された「ABCモデル」という仕組みについて、画像と合わせてご紹介いたします。 

野沢園スタッフblog 造園社員の植物ノート 図

一般的に花の構造は、がく片、花弁、おしべ、めしべの4つに分けられます。(嶋田幸久、萱原正嗣 「植物の体の中では何が起こっているのか」p270より抜粋) 

野沢園スタッフblog 造園社員の植物ノート 図版

それらの花の構造を作り出す遺伝子には、A、B、Cの3つの遺伝子グループがあります。 (嶋田幸久、萱原正嗣 「植物の体の中では何が起こっているのか」p271より抜粋) 

これらの遺伝子グループの組み合わせによって、以下のように作られる花の構造が異なります。

Aグループ単体がく片   
Aグループ+Bグループ花弁 
Bグループ+Cグループ雄しべ 
Cグループ単体雌しべ

ABCの3つの遺伝子グループの領域が抑制されると、花の構造が変化するという仕組みです。 例えばCグループの遺伝子に変化が起きて領域が抑制されると、Aグループの遺伝子の領域が拡大し画像のように雄しべだった部分が花弁に変化します。

これを踏まえ、一重咲きと八重咲きの2つの梅の花を比べてみましょう! 

▼一重咲きの梅

野沢園スタッフblog 一重咲きの梅

▼八重咲きの梅

野沢園スタッフblog 一重咲きの梅

少々分かりづらいですが、この写真のおしべの数を目視にてそれぞれ数えたところ、一重咲きは40本前後なのに対し、八重咲きは30本前後と若干おしべの数が少なく見えました。 

この八重咲きの梅の花はABCモデルの通り、おしべが花弁に変化していると言えそうです。

ほかの花でも見られた咲き方の違い

弊社敷地内や自宅の周りで見つけた花では、同一の株で咲いている花において花の咲き方が少し違うことがありました。 

サザンカ

こちらは弊社敷地内で咲いていたサザンカです。同一の株で違う枝に咲いていましたが、雄しべの一部が花弁に変化しています。

▼通常のサザンカの花

野沢園スタッフblog 山茶花通常の花

▼咲き方が変化したサザンカ

野沢園スタッフblog 変化した山茶花

ツツジ

こちらは私の自宅周辺の公園で咲いていたツツジです。同一の株で違う枝に咲いていました。前述のサザンカと同様、雄しべの一部が花弁に変化しています! 

▼通常のツツジの花

野沢園スタッフblog ツツジ1

▼咲き方が変化したツツジ

野沢園スタッフblog ツツジ2

花の品種改良ではこのように変異した花の株を増やしたり、違う花の性質を持つ品種を掛け合わせたりするなど、様々な方法で咲き方の異なる品種を生産しているようです。 

今回は「遺伝子」が関係する花の仕組みのお話をご紹介しました。一見難しそうにみえる花の仕組みでしたが、実は既に目にしたことがあるかもしれません。

ぜひ皆さんも近所の公園などに咲いている花を観察してみてください。違いや発見があるかもしれませんよ。

【参考文献 】嶋田幸久、萱原正嗣「植物の体の中では何が起こっているのか」(2015)p23、269~272 有限会社ベレ出版 

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