研修・イベント

京都研修

今年4月に弊社社員が京都庭園研修に行ってきました。

京都で感じたことを紹介します。

 

春は新緑が芽吹き多くの花が咲き始める散策にはよい季節です。

そのような新緑と花が美しい4月中旬に、造園部所属の社員数名で京都に庭園研修に行ってきました。

研修のテーマは“作庭年代の異なる庭園をみる”ということで、今回は主に南禅寺周辺と松尾大社~嵐山にかけて庭園などを回りました。

 

南禅寺は古くは京都五山の上の寺格とされた寺院で、周辺寺院(塔頭)には室町時代から江戸時代の古い庭園がみることができます。

しかし明治以降は南禅寺周辺に政財界の邸宅が多く建築され、それにあわせて新たな庭園が作庭されました。

それらの邸宅の庭園を語る上で外せないのが “琵琶湖疏水” と “小川治兵衛” だと思います。

琵琶湖疎水は、産業の振興、水力発電、灌漑、水運、水道用水などのために明治時代に造られた琵琶湖から京都市内までの水路で、現在でも上水等に利用されています。

この琵琶湖疏水を利用して南禅寺周辺に新たな日本庭園の流れを作ったのが近代日本庭園の先駆者と呼ばれる小川治兵衛でした。

彼の庭園の特徴は、それまでの哲学的・思想的な庭園ではなく自然の風景に近い景観と、芝生や低木などをつかった広がりのある景観です。

その小川治兵衛の初期の作品が、明治の元勲山縣有朋の別邸である無鄰菴庭園です。

この庭園はそれほど観光客が多くないですが今でもきれいに整備されていて、日本庭園の良さが感じられるお勧めの庭園です。

小川治兵衛はこの無鄰菴庭園を手始めに平安神宮神苑や對龍山荘庭園など琵琶湖疏水を利用した庭園を多く作庭しました。

平安神宮神苑は大きな庭園で春には多くの桜が咲き乱れ、多くの観光客などでにぎわいます。

人が多いところは苦手という方やのんびり過ごしたいという方には無鄰菴でお茶をいただきながらのんびりと過ごすのがお勧めです。

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【無鄰菴庭園】

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【無鄰菴庭園 三段滝】

次に訪れた松尾大社には、昭和を代表する庭園研究家であり作庭家であった重森三玲晩年の設計作品である松風苑があります。

松風苑は3つの庭園から構成されており、立体的な造形感を押し出した石組が特徴です。

コンクリートなども使用して現代的な要素が見ることが出来ます。

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【松尾大社 上古の庭】

最後に訪れた嵐山周辺は世界遺産にも指定されている天龍寺を中心とした有数の人気の観光エリアです。

その天龍寺には室町時代に夢窓国師が作庭したといわれる曹源池を中心とした回遊式庭園があります。

曹源池の奥には龍門瀑と呼ばれる滝組(枯滝)がありますが、これは滝を上る鯉が龍になったという中国の故事を元にしたものといわれます。

この庭園が作庭された室町時代から江戸時代頃までの庭園は、中国の故事や蓬莱思想に基づいて作庭されたものが多いのが特徴で、日本庭園に影響があったのが中国の文化であったことがよくわかります。

それに対し小林治兵衛の庭園は、芝生や低木の寄植えを多用するなど西洋(イギリス風景式庭園)的な要素が感じられます。

これは文明開化が欧州の文明を率先して取り入れた時代だったこと、特にその中心的役割を担った山縣有朋が今までにない庭園を小川治兵衛に求めたことが大きく影響したと考えられます。

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【天龍寺 曹源池と龍門瀑】

今回の研修で感じたことは“日本庭園“といわれるそれぞれの庭園も時代の流れとともに大きく変わってきているということです。

それぞれの庭園は文化を表すものであり、作庭された時代にどの国の影響を一番受けていたのか、国内では何が最先端であったのかが如実に現れていると感じられました。

琵琶湖疏水にはほかにも船を運ぶための線路である“インクライン”など見所が多くあります。

明治時代の最先端技術を駆使した琵琶湖疏水をたどりながら庭園をめぐり、その時代の流行や技術、そしてそれらに影響を与えた時代背景などに思いをはせながら、南禅寺名物湯豆腐をいただくという一日はいかがでしょうか。

造園部社員S

 

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