植物
造園社員の植物ノート ・シャクナゲ

こんにちは!あっという間に4月も後半。本格的な春が到来しましたね。弊社の温室では花物が増えてきて、温室内の景色が色鮮やかになってきました。
関東ではサクラの見頃も終え、次に見頃を迎えるのはツツジ類の花たちです。
今回はツツジ科ツツジ属のシャクナゲについてご紹介いたします(データは弊社にあるセイヨウシャクナゲの基本データです)。
セイヨウシャクナゲについて
名称 | セイヨウシャクナゲ |
学名 | Rhododendron cvs |
科名 | ツツジ科 |
属名 | ツツジ属 |
開花期 | 5~6月ごろ |
樹高 | 2~5m |
ヨーロッパで品種改良された常緑低木のシャクナゲは約1000種あるとされ、日本には明治時代に渡来しました。この品種群を「セイヨウシャクナゲ」と呼んでいます。日本にも自生のシャクナゲが数多くあり、「アズマシャクナゲ」や「ホンシャクナゲ」などがあります。
シャクナゲの花は、複数個が集まって一つの大きな花のように見えます。一つ一つの花も大きくて、とても豪華な印象ですよね!花をよく観察すると、中心部に斑点のような黄色の模様があります。これは、『ネクターガイド(花蜜標識)』というものです。ハチなどの昆虫に向けて、蜜のありかを教える役目を果たしていると言われています。
ネクターガイド(花蜜標識)とは
昆虫は人間と異なり、波長の長い赤色などを見ることはできませんが、波長の短い紫外線(UV)は見ることができます。シャクナゲをはじめとしたツツジ類のネクターガイド(花蜜標識)は、紫外線を多く吸収するので昆虫には濃く見え、蜜腺に誘導する目印になっていると考えられています。
ちなみに近年の研究では、このネクターガイド(花蜜標識)の紫外線を吸収する物質は、花粉を運ばないイモムシなど幼虫に対して忌避性があることが分かりました。遠くから昆虫を呼び寄せるネクターガイド(花蜜標識)は、花粉を運ばない他の動物達を寄せ付けない 2 重の仕掛けで生存競争に勝ち残ってきたのです。すごいですね!ただの模様に見えますが、植物たちはしっかり目的や意義をもち、長年の進化によって形作られたものだったのですね。
それでは、実際にシャクナゲの花でネクターガイド(花蜜標識)を確認してみましょう!濃いピンク色のシャクナゲは、濃い紫色のネクターガイド(花蜜標識)がはっきり確認できました。

一方、薄いピンク色のシャクナゲは、薄い茶色のものが確認できました。

このネクターガイド(花蜜標識)は、今回ご紹介したシャクナゲだけでなく、さまざまな植物の花にもあるそうです。皆様もお花見にお出かけの際は、ぜひ花の模様に着目してみてください!
参考文献
・増村征夫 「ひと目で見分ける 340 種 日本の樹木ポケット図鑑」(2016) p.43 シャクナゲの仲間 株式会社新潮社
・公益財団法人日本科学協会 科学実験データベース「蜜を吸うミツバチと花の蜜標を観察しよう」
・東邦大学 理学部生物学科 「見える世界と見えない世界」 【2007 年 2 月号】